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My name, Your calling
名前を呼ぶっていうのはけっこう自分の創作の原点なので、このネタを使うのは楽しいです。
そんな感じのテッドテト。糖度はあるような気がするような気がします。
「テッドテッドテッド。
連呼しにくい名前だな」
何を思ったのか、テトは名前を繰り返す。
しかも一言多かった。
「文句をつけるなら呼ぶな」
テッドは暇つぶしに開いていた広辞苑のページをめくりながら、冷たく切り捨てる。
自分でつけたわけではないが、悪く言われて良い気はしない。
「続けると、転んだときの効果音みたいだと思わないか?」
話を聞いているのかいないのか、それとも聞いていてあえて無視しているのか。
テトの口は止まらない。
しかも、話に脈絡がなかった。
「そんな馬鹿げたことを考えつくのはお前だけだ」
テトの突拍子のなさには慣れていたから、辞書を読みながらそう返す。
「テッドテッドテッ、ドテッ。
ほらな!」
「一々証明しなくていい」
嬉しそうに報告するテトに、思わずため息をつく。
設定年齢より一回り以上子どもじみているのは知っている。
けれどこれは、発想も発言もまるで幼児だ。
偉そうな口調だけが、不釣り合いで。
そこがテトらしさでもあるのだが、やはり妙だということに変わりはない。
「面白い名ではないか」
テトは意思を曲げるつもりはないらしい。
あくまで男の名前を話題にしたいのか。
「生憎と、遊ばれるためにある名ではないのでな」
大勢の中で個を表すためにある。周りと区別して呼ぶためにある。
決してテトの玩具になるためにあるわけではない。
第一、遊ぶにしても、モモやユフの名前の方が簡単だろうに。
「使えるものは有効活用すべきだ」
言っていることは一見正しい、が。
「……お前は何がしたいんだ?」
テトの考えていることが分からず、そう訊いた。
辞書を閉じ、振り向いてテトが見えないことを確認すると、仕切りの方へと足を進める。
「ただ名前を呼んでいるだけだぞ」
不思議そうな声。
仕切りの向こうには、ベッドで抱き枕を手にくつろいでいるテトがいた。
テッドが覗いたのが嬉しいのか、身を起こして手を振り出した。
「だから、俺の名を呼んで何になる?」
言葉を換えて問いかける。
現代用語が多数載っている事典にもないような名前。
テトから派生して、似たような音がつけられて。
ただの記号。識別名だ。
「何にもならないな」
テトは即答する。
「生産性のない会話はしたくない」
そう告げて、仕切りに背を預ける。
データの壁。壊れることのない壁。それは二人の間に必ずあって。
まるで何かを示唆しているようではないか。
同じ音源が元になっているとはいえ、所詮は他人だと。
名前につながりがあったところで意味などない。
「本当のことだ。
これといって理由もない。
ただ呼びたかったから呼んでいただけだ」
ない、はずなのに。
少女は男の名を呼びたいと言う。
当たり前のように、理由もなく、ただ呼ぶことだけを望む。
「テッド」
呼ばれて、全身が粟立つような感覚がする。
0から1へ。マイナスからプラスへ。
テトが動力となって、男は“テッド”になる。
「ボクはテッドという名が好きだぞ。
何度でも呼んでやろう」
腰に手を当て、得意げな笑みを浮かべて言う。
えっへん、と効果音がつきそうだ。
「迷惑だ」
それだけ呟くのがやっとだった。
うつむき、手で顔を覆う。
「君は実に馬鹿だな!
そこは普通ありがたがるところなのだ!」
テトの怒鳴り声が反響する。
鳴り響く。男の耳の裏で、少女の声が。
それは幻聴にも似た、甘い甘い毒。
「本当に、迷惑だ……」
ついた吐息は熱かった。
熱が、冷めない。音が、やまない。
名前なんて、ただ識別するためだけの、ナンバーと同じ。
それが、彼女に呼ばれてることによって……特別な響きを持つ。
「迷惑でも、呼び続けてやるぞ」
テトは人の気も知らずに怒っているようだった。
願わくば。
己を呼ぶ声が、途切れることのないように。
高慢で無垢な少女が、音にし続けてくれるように。
「好きにしろ」
素直になれないテッドは、そう言うことしかできなかった。
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