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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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Ice cream

 アイスの日(5月9日)のために書いた話。10日に書けてたのにこっちで公開するの忘れてました(^_^;)
 カイミクで性格設定2。ミク視点。
 糖度は……自分的には高いと思ってます。






 いつもよりちょっとだけ、特別な日。
 そんな日には、あなたの笑顔が見たいから。



Ice cream




「ミーク~! 聞いて聞いて!!
 今日はアイスの日だよ~!」
 真昼の照明器具よろしくいつも無駄に明るいKAITOの声が、戸を開く音と共にミクの部屋に飛び込んだ。
「……で?」
 起きたばかりで着替えてもいなかったミクは、ベッドの上から一音で返す。
 まったく、彼は乙女の事情というものが分かっていない。
「あれ? ミク不機嫌? どうかした?」
「別に……」
 きょとんとしたKAITOに、どうしても冷たい態度を取ってしまう。
 ぼさぼさの長い髪を手櫛で軽く整える。
 無頓着なKAITOに、何度こういう姿を見られたことだろうか。

「せっかくのアイスの日なんだからさ、一緒にアイス食べようよ!
 そうしたらミクも元気になれるよ!」
 ベッドの横までKAITOは近づいてきながら言う。
 できれば身支度が済むまでは部屋に入ってきてほしくない。というこちらの都合は完全無視だ。
「アイスの日に限らず、アイス食べてる気がするんだけど」
 ミクは呆れ口調で指摘する。
 このパソコンにKAITOがインストールされてから、アイスを食べなかった日はない。
 たまにミクも付き合わされることがあったし、一日に何度も食べることだってあった。
「アイスはいつ食べたっておいしいからね。
 でも記念日だったらもっとおいしいでしょ♪」
 KAITOはウキウキと本当に楽しそうに話す。
 彼みたいな単純思考なら、世界は素敵なことばかりに違いない。
「どこからその自信が出てくるの?」
「アイスのことなら何でも知ってるから」
 自信満々にKAITOは言いきる。
「例えばどんなこと?」
 興味があったわけではなく、なんとなく訊いただけだった。
 すぐにそう言ってしまったことを後悔した。

「一般的にアイスクリームって合わせて呼んでるけど、実は乳成分の量によってアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3つに種類分けされててね。
 食品衛生法にもとづく『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』によって定義と成分規格が決められてるんだ」
 すらすらとどこで知ったのか謎すぎることをKAITOは語っていく。
 VOCALOIDに“忘れる”ということがないとしても、記録していたことをメモリーから取り出す必要がある。
 つまり、即答できるということは丸暗記している、ということだ。
「その定義っていうのが、乳またはこれらを原料として製造した食品を加工し、または主要原料としたものを凍結させた――」
「分かった分かった分かったからもういい!」
 このままだと永遠に続きそうだったので、ミクは止めに入る。
 アイスについて詳しくなっても何の特にもならない。
「え~、まだ定義の途中で成分規格すら言ってないよ?」
 KAITOは不満げにそうこぼす。
「お兄ちゃんが根っからのアイス好きなのは分かったから」
 嫌味のつもりで言ったのに、
「うん、大好き!!」
 輝かんばかりの笑顔で肯定された。
 まるで自分に言われたように受け取ってしまい、顔に熱が集まる。
 いつもいつも、この兄には動揺させられてばかりだ。
「あ、でもね」
 KAITOはこちらの都合も考えずに、平気で爆弾を落とす。

「ミクと食べるアイスが一番好きだよ」

 そう、こうやって。
「……っ!」
 恥ずかしげもなく告げられた言葉に、ミクは息を呑む。
 自分と食べるアイスが一番だと。どんなにおいしいアイスよりも好きだと。
 無邪気な笑みを浮かべて、KAITOは告白まがいのことを口にする。
「だから、一緒に食べよう?」
 そう誘うための前振りだったのだろう。
 分かったところで、胸の高鳴りは治まらない。
「お、お兄ちゃんのっ……」
 バカ! といつものように言おうとした。
 けれど、KAITOの笑顔を見ていたら、なぜか怒る気も失せてしまって。
 少しだけ特別な今日くらいは、素直になろうと思った。

「……冷凍庫に、新しく追加しておいたアイスがあるの」
 食べ物データを保管しておく冷蔵庫と冷凍庫。
 そこにこっそり増やしておいたハーゲンダッツがあった。
「え? 昨日見たときはなかったけど」
 KAITOは不思議そうに首をかしげる。
「夜に、記念日のこと偶然知ったから、お兄ちゃんにあげようかなって」
 本当はずっと前に調べたから知っていたのだけれど、さすがにそこまでは言わなかった。
 アイスの日にアイスをあげたら喜ぶだろうな。
 そう思って内緒でデータを探しに行ったなんて、口が裂けたって言えやしない。
「ミク……」
 驚いたように目を丸くするKAITO。
 ミクの方からそんなことをするとは思わなかったのだろう。

「それ、一緒に食べよ」
 声は震えていたかもしれない。顔は真っ赤だったかもしれない。
 それでもはっきりと、ミクは言葉にした。



 いつもよりちょっとだけ、特別な日。
 そんな日には、あなたの笑顔が見たいから。
 自分の気持ちに素直になって、あなたとの時間を大切にしよう。
 きっと、一緒に食べれば何だっておいしいのは、私も変わらないから。





 ツンデレがデレる瞬間。たまにはこのミクだって素直になるのです。
 アイスの日くらいはKAITO兄さんに優しいお話でもいいですよね~。え、誕生日とかは?(笑)
 設定2のKAITOがバカイトのくせして天然タラシなのはもうデフォ。ミクが怒る方が話が進む♪
 でも今回は怒らなかったので、そこがちょっと大変でした。いや、珍しく怒らないのが大切な部分なんですけどね!
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