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Simile talk
初のミク視点で、初の一人称。
カイミク要素ありでMEIKO姉さんも出てきます。
お兄ちゃんは水のようだと思う。
冷たいって意味じゃなくて、見えてるのに、そこにあるって分かるのに、捉えどころのないところとか。
水音を聞いた時には心が凪いで、穏やかになれるところとか。
それがなくちゃ生きていけないところとか。
そう言ったら、お兄ちゃんは笑った。
「ボーカロイドは水がなくても死なないよ」
って、どこか嬉しそうに。
でもきっと、私はなかったら生きていけない。
真面目に返すと、驚いたように目を見開いて、それから苦笑した。
お姉ちゃんが「ずいぶん熱烈な告白ねぇ」なんてからかってきたから、私はあわてて否定した。
そしたらお兄ちゃんは「分かってるよ」って今度は少し寂しそうに笑って、私の頭をなでてくれた。
お姉ちゃんは炎のようだと思う。
一緒にいるとポカポカして、心まで温かくなるところとか。
時々、火傷しそうなくらいに激しくなるところとか。
いろんな色を見せる炎みたいに、たくさん魅力があるけど、気紛れなところとか。
そう言ったら、お姉ちゃんは笑った。
「一応これは褒められてると取っていいのよね?」
って、どこか楽しそうに。
もちろん! ってコクコク思いきり頷いたら、ありがと、って表情を和らげた。
お兄ちゃんが「ならめーちゃんを消すのが僕の役目なんだね」ってニッコリと言うと、お姉ちゃんは心底嫌そうな顔をした。
それが何だか面白くて、私は思わず吹き出してしまった。
お兄ちゃんは水。
お姉ちゃんは炎。
じゃあ、私は何なんだろう?
何みたいだと思われてるんだろう?
ふと、気になった。
一度、気になり出したら、止まらなかった。
だから、訊いてみた。
「私をたとえるとしたら、なぁに?」
って、思いきって。
「ミクは、緑かな?」
お兄ちゃんは少しの間視線をさまよわせてから、言う。
一瞬、髪の色のことかと思った。
長いツインテール。それは確かに印象的なのかもしれない。
でも、それだけで……見た目だけで決められてしまうのは悲しかった。
――まあ、お兄ちゃんの水も、お姉ちゃんの炎も、外見の影響を受けてないことはないんだろうけど。
緑がかった長い髪を指にくるくる巻いていじりながら、いかにも不満って顔をした。
そしたらお兄ちゃんは「髪から連想したわけじゃないよ」って優しく笑った。
何で考えてたことが分かったんだろう!?
私は驚いて目を丸くする。
お兄ちゃんっていつもこうだ。
私が怒ってるのとか、悲しんでるのとか、すぐばれちゃって。
さり気なくなだめたり、慰めたりしてくれる。
人の心が読めちゃうなんて、おとぎ話の中の魔法使いみたいだ。
そんな風に思ってたのも分かったのか、
「ミクは顔に出やすいから」
って当たり前のように話した。
ペタペタ、頬とか額とか鼻先とか、さわって確かめてみる。
で、出てる? 出てるってどこに?
まさか、でっかく書いてあったりしないよね!?
私がワタワタしてると、お姉ちゃんが声に出して笑った。
「書いてあったりはしないから大丈夫だよ」
肩を震わせてるお姉ちゃんにやれやれ、って顔をしてから、お兄ちゃんは言った。
それでやっと安心した私は、本題に戻ろうと口を開く。
「だったら、どうして緑なの?」
髪の色からじゃないなら、何でそう思ったの?
私が首をかしげて真剣な表情で尋ねると、お兄ちゃんは一つ頷いてから語り出す。
「草木の緑は人を和ませて、優しい気持ちにしてくれる。
木陰を作って安らぎを与えてくれて、葉擦れの音は心を落ち着けてくれる。
そして時には花をつけて、見る者を笑顔にしてくれる」
ミクは僕にとってそんな存在だから、ってすごく綺麗な微笑みを浮かべている。
え? あ、わっ……何だかいきなり恥ずかしくなってきて、自分の頬を両手で包んだままうつむいた。
言葉の通りだとすると、今の笑顔も私のおかげなのかな?
いつもお兄ちゃんが優しいのも、落ち着いてるように見えるのも、全部?
どんどん自分に都合の良い方に考えちゃう。
「あ……ありがとう」
何とかそれだけ言うことができた。
私、今絶対に顔赤くなってる。
お姉ちゃんの「勝手にやってなさい」って声が聞こえてきて、余計に顔を上げられなくなってしまった。
じゃあ、私はいつもお兄ちゃんから栄養をもらってるんだね。
私が緑で、お兄ちゃんが水だから。
お兄ちゃんのおかげで、すくすく育つことができるんだ。
でも。
心の中で付け足す。
お兄ちゃんは、水だけじゃない。
空のようだとも思う。
広くて、いつも近くにあるのに、とても遠くて。
でも寂しい時は傍にいてくれる気がして。
悲しい時は涙を包み隠してくれて、虹を見せて慰めてくれて。
嬉しい時は一緒に笑ってくれて、歌を歌ってくれて。
綺麗な、どこまでも澄んだ空のよう。
緑は水に元気をもらって、空に見守られているから、のびのびと歌えるの。
水にお礼を言うように、いつか空に届くように。
大好きな、大切な存在だから――。
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