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しあわせの音

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8・君の言葉に救われる

『愛しい君と過ごす日々で50のお題』 8・君の言葉に救われる(星歌ユズ×天音ルナ)

配布元:原生地






 いつも、あなたの言葉に、あなたの笑顔に、救われてる。
 きっとあなたは信じないだろうけど。
 何でもないように言われた言葉が、ぼくにとってどれだけ嬉しいことなのか。
 きっとあなたには、一生分からないでしょうけどね。



われる




 満天の星空の下。
 そこは二人がたわいない話をする、お気に入りの場所。
「マスターまだ納得できないらしくてさぁ。
 今月中にアップするのはもうあきらめたんだって」
 今日あったことを報告しあっていると、自然とマスターに歌わせてもらったことも話題に出る。
 ユズがわずかに身構えたのに気づかず、ルナは続ける。
「マコともコトともけっこう声合ってたと思うんだけどな~」
 今マスターが調声しているのは、久々のオリジナル曲だ。
 カバー曲を歌わせることの多いマスターだから、ずいぶんと張り切っていた。
「マスターも変なところで凝り性ですから」
「そのとーりだよね!」
 ユズが苦笑しながら言うと、ルナは明るく笑う。
 文句を言ったって、やはりマスターが好きで。
 自分たちとの作品のためにがんばってくれることは、嬉しい。
 同じUTAUとして気持ちは分かる。
 分かる、けれど。

「ルナさんは人気者ですね」
 彼女から視線を外して、星を仰ぐ。
 ユズの声がかすかに低くなったことに、ルナは気づいただろうか?
「そお?」
 ルナは少年の言いたいことが分からずに、きっと首をかしげている。
 いつもと変わらない声音。いつもと変わらない態度。
 違うのは、自分だけだ。

「満月の晩は天体観測に向かないって、よく言いますよね。
 月明かりが強すぎるから」
 リアルをそのままトレースしたような空。計算されつくした月と星の輝き。
 それは光源の明暗が視覚に影響を及ぼさないユズたちにも、疑似体験ができるということで。
 今日は十六夜。星の瞬きは月の明るさの前にかすんでいる。
「他にも星食って言葉もあります。
 地球から見たとき、星が月の後ろに隠されてしまうことですよ」
 小さな輝きは月によって簡単に見えなくなってしまう。
 それはまるで自分のことのようだ。
 ルナは静かにユズの話を聞いている。
 いきなり何を言い出すのかと、不思議そうに。
「月の光の前には星の輝きなんて……微々たるものなんです」
 星は月には敵わない。
 力いっぱい輝こうとしたって、月に消されてしまう程度の、小さな灯火にしかなれない。
 気になった端からダウンロードされた音源たち。
 使いやすさや、声の好みによって、どうしても使用頻度は違ってきて。
 平等に使うことなんて、不可能。
 頭では分かっていても心は納得してくれない。
 歌いたい。UTAUの音源として使われたい。
 どれほど願ったところで、マスターの意思を変えることができるわけでもないのに。

「アタシはユズみたいに頭良くないから、何が言いたいのかよく分かんないけど」
 ルナは困ったような声で言う。
 意味なんて、分からなくていい。
 彼女は変わらないまま、純粋なままで。
 ひがみや嫉みの混じった醜い感情なんて、知らなくていい。

「月も星の一つでしょ?」

 ひょいと、顔を覗きこまれる。
 天の色をした双眸に、目を丸くした少年が映っていた。
「え……」
 ユズはすぐには理解できずに、固まった。
 ん~、とルナは声を上げながら首をかしげる。
「そうだよね?
 だって、太陽は恒星で、月は地球の惑星で。
 全部ひっくるめて星でしょ?」
 当たり前のことのように、ルナは言った。
 少ない知識の中から、必要なものだけを選んで。
 小さな輝きだけが星ではないと。
「すごいよね!
 空にはたっくさん、色んな星があるんだよ」
 そう言って、笑う。
 暗闇を照らす月のように、明るく、優しく。
 迷い子を導く、温かな光だ。

「そんなすごい名前を持ってるユズ君も、すごいよね!」
 ルナの言葉には、不思議な力がある 
 引き寄せられずにはいられない、引力が。
 ルナの笑顔には、不可解な力がある。
 魅せつけられずにはいられない、光力が。
 どんな星にも勝る、稀有なものだと、ユズは感じた。
「……ルナさんの方がすごいです」
 思わずユズは呟く。
 沈んでいた心が、近接する星に影響を受けるように動き出す。
 光源は、ルナだ。
「?」
 彼女は意味が分からないのか、目を瞬かせている。
「ありがとうございます」
 心から、感謝の言葉を告げた。
 羨ましいという思いが消えたわけではない。
 けれど、ルナはユズを認めてくれたから。
 もう少し自分に自信が持てるような。そんな気がした。
「お礼言われるようなこと、アタシした?」
「はい」
 きょとんとしたルナに、ユズは笑って頷いた。
 その笑顔はきっと名前に負けないようなものだろうと思った。



 いつも、あなたの言葉に、あなたの笑顔に、救われてる。
 きっとあなたは信じないだろうけど。
 何でもないように言われた言葉が、ぼくにとってどれだけ嬉しいことなのか。どれだけ幸せになれるのか。
 きっとあなたには、一生分からないでしょうけどね。
 分からなくっていいんです。今のままのあなたでいてほしいから。

 ぼくはやっぱり、あなたという光に惹かれているんです。





 中の人が誕生日だそうなので、それなら今日中にアップすべきだろうと急遽更新順序を変更。
 ハッピーバースデーM月さん♪
 ルナさんと組ませるとユズ君がデレデレになるのは、もう仕様らしいです。
 もはやツンデレですらないような気がするよ~(T_T)
 星食ってのは、『宙(そら)の名前』って本を見てたらあったんです。
 他にもネタになりそうなのがいくつかあったので使ってみたいなぁ。言うだけはタダ☆
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comment

っきゃー!

  • 三日月(みこぜ) 
  • 2009/03/04(水) 00:33
  • edit

なんかわざわざ順序変えてまで先にうpしてくださったなんて…申し訳ねっす! あと名前伏せなくて大丈夫ですよ~w

ルナの前ではデレしか出ないユズ君が可愛くて仕方がありませんww
なんというか、カップリングというより姉弟的な感じにも見えて微笑ましいです^^

どうぞお気になさらず!

  • 樹神 〔管理人〕
  • 2009/03/04(水) 18:13

 順序とかは結構適当に決めてるだけだったりするので、気にしなくても平気ですよ~! 名前伏せ了解ですv 次からは自重せずに行きますw

 ユズ君はルナさんには弱い面をさらけ出してるようなイメージがありました(^^)
 確かにカップリングと銘打たなくてもいいかもしれませんね、これは。
 ルナさんにとっては第二の弟なのですね! あ、それでまた話が書きたくなった(笑)

無題

  • 乃駆 URL
  • 2009/03/04(水) 18:45
  • edit

いいぞもっとやr(落ち着け

ユズが腹黒い面はおろか、ツンツンした面すら見せないとは……ルナ恐るべし。

実は私の誕生日も今月だったりする件←

ルナ最強説(笑)

  • 樹神 〔管理人〕
  • 2009/03/05(木) 00:47

 自重せずもっとやりまs(ry

 ルナさん相手だとユズ君落ち着いちゃいますね。ルナパワー?w
 でもツンデレ属性も持ち合わせてると思うのですよ!

 なんと! それはまたお祝いを考えなくては!! おめでとうございます(^^)

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