VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです
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Gothic and Lolita
いやぁ、更新速度ががた落ちしましたね! まあ忙しいんですが!
栄一ユフ。友情出演に栄二・サラ・ルナ・サユ。ずいぶん前にUTAU日々の方で公開していた話です。
ユフが出てくるまでが長いですが、たぶん甘いんだと思います。
いつもと変わらない日、だったはずだった。
サラとルナが結託して何かをしているらしいという話は聞いていたが。
楽しいことが好きな二人組。
だまされやすそうな者にあることないこと吹き込んだり、朱雀っぽいどの顔にいたずら描きをしたり。
今回も似たようなものだろうと思って、大して気にしていなかった。
「兄ちゃん! 兄ちゃんっ!!」
弟のあわてたような声に、栄一は椅子の背もたれから身を起こす。
また、何か不測の事態でも起きたのだろうか。
問題児ばかりのUTAUシンガー。
先の二人に合わせ、年長者のはずのテトや遊びたい盛りのコト、天然ボケなトリや人を食ったようなところのあるユズまで。
……挙げきれないほどには、たくさんいる。
「どうしたんだ、栄二?」
とりあえずは現状把握。と思ったが。
栄一の部屋のドアを大きな音を立て開けた栄二の姿を見て、彼は思いきり眉をひそめた。
「見て見て~! リボン♪」
左側の髪を一つまみ、濃いピンクのリボンで結わえられている。
確かにまだ幼さの残る外見をしているから、似合ってはいた。微妙なことに。
「栄二……。普通それで喜ぶ男はいないぞ」
どうコメントすればいいか分からず、それだけを口にする。
どうせ犯人はあの二人組だろう。と予想はついていた。
「ソラさんとかもやってたよ?」
栄一の前まで来た少年はきょとんとして言う。
可哀想に。姉の押しの強さに負けたのだろう。
嫌々ながら付き合うソラの顔と心境が、手に取るように分かった。
「他に、被害者は?」
まずは現状把握からだ。そう自分に言い聞かせ、リボンを見ないようにしながら尋ねる。
「被害者って言い方はひどいよ~」
むっとしたように抗議してくる弟を、
「栄二」
低い声で名を呼び、退ける。
もし無理やり遊ばれている者がいたら、立派に被害者だ。
「モモちゃんがいつもと違う格好で楽しそうにお掃除してたよ」
栄二は今度は大人しく教えてくれる。
兄が生真面目な質だと分かっているからだろう。
「服まで揃えたのか」
彼らは音源で、着ている服だってただのデータだ。
ファッション系のサイトさえうまく見つけられれば、画像データから簡単に複製できる。
中には自分たちのような人格を持った者用にと、フリーの素材を公開しているサイトもあった。
VOCALOIDほど検索機能が充実していないUTAUにとっては、関連ページを辿って見れるそういった場所はありがたい。
「今お着替えしてるのはね~、ユフちゃんとサユさん!」
朗らかに告げられた名前に、
「やっぱり……」
栄一は額に手をやってため息をつく。
ユフが巻き込まれている確率は高いだろうな、と思っていた。
万事控えめな彼女は何をされても文句を言わないから。
ウキウキとしている栄二とは対照的に、栄一は鬱屈とした気分だ。
サユは自分の意志を言えるし、たぶんモモのように本人も楽しんでいるだろうから問題ない。
ただ、ユフは。
何でも内にため込んでしまう性格だから、心配だ。
「どんな様子だった?」
何もしないよりはマシだと、一応訊いてみた。
「ん~? いつもと変わんなかったよ」
やはり栄二の視点でははっきりとしない。
自分で確かめに行くしかないだろうか、と栄一は考える。
「皆どこにいるんだ?」
ドアの前まで歩いていき、ついてくる弟に訪ねた。
「サラちゃんの部屋だけど……もしかして兄ちゃん、着替え覗く気?」
栄二は目を丸くして首をかしげる。
「んなわけあるか!」
予想外の疑いを受け、栄一は取り乱し、怒鳴ってしまう。
まったく何を言い出すのか。
そんなこと、する気もなければできるはずもない。
人一倍お堅い性格をしていると、自覚があった。
「だよね~。あぁビックリした」
「それはこっちの台詞だ……」
ホッとしたように笑う栄二に、彼はため息をつく。
「別に心配しなくっても、ユフちゃん嫌そうじゃなかったよ」
兄が何を懸念していたかやっと気づいたらしい。
栄二はそう言うが、栄一の不安は消えない。
見ただけでは思っていることまでは分からないことがあるから。
栄一は何も返さずに、リビングへと出た。
「あ、サラちゃんにルナちゃん!」
ちょうどその時、サラの部屋の扉が開いて、二人が出てくる。
栄二が二人の元まで駆けていく。
「えーじっちゃん!」
「どうだった? 反応は」
サラとルナはきゃいきゃいと仲良さげに話し出す。
テンションはいつも通り、高めだ。
「イマイチ。褒めてもらえなかったよ~」
褒めてもらいたかったとは、初めて知った。
あれのどこをどう褒めればいいというのか。弟の思考回路は謎だ。
「そりぁあえーいっちゃんじゃあね~」
サラは予想していたのだろう。苦笑して栄二の頭をなでる。
「両方リボンつければよかったんじゃない?」
ルナはまったく分かっていないようで、やめろと言いたくなる提案をした。
「ユフはどうした?」
栄一一人置いてきぼりにされている感はあったが、まずは最優先事項を問う。
サラの部屋にいるのだと思っていたが、出てきたのは二人だけ。
もう部屋に戻ったのだろうか。
「ん? ユフちゃんなら――」
るながサラの部屋に視線を向けた。
どうやら中にいるらしい。
「私のことは訊かないんだね。
まあ、栄一さんらしいしいいけど」
開けっ放しの扉を見ていたら、期待していたのとは違う人物が出てきた。
彼女の意外な格好に、栄一は目を瞬かせる。
「サユ……どうして男装なんだ?」
いつもの中華風の服ではなく、銀のチェーンのついた黒い上着に、所々切れているジーンズ。
いわゆるゴシック調というやつだろうか。
ユフと同じく淡い色彩をまとっているサユだが、不釣り合いなようでいて妙に似合っている。
普段は右の下の方で団子にしている髪は、後ろで無造作に結ばれていて、男らしい。
「サイより格好良くなってやろうと思って」
ニィっと、いたずらっ子のように笑う。
男に見えるような化粧もしているのか、確かに格好良い。
サイと比べてどうなのかまでは分からないが。
「イケメンだよね~!」
「ね~!」
上出来、とばかりにサラとルナは手を合わせる。
息の合いっぷりが、二人の過去に起こした問題の数々を知っているだけに空恐ろしい。
「ほら、ユフっちもおいでよ~」
サラが部屋の中にいるだろうユフに手招きをする。
「栄一さんも見たいだろうからね」
サユはくすりと意味深な笑みをこぼしてそう言った。
「わ、わたしは……そのっ……」
泣き出しそうに聞こえる、その声。
いつも通りの恥ずかしがり屋なユフが、そこにいた。
声が聞けただけでなぜか安心してしまった。
着飾られたかったかどうか、まだ分かっていないのに。
「ユフ、別に無理をする必要はないぞ。
この二人の気まぐれに巻き込まれて大変だったな」
ねぎらうように、優しく声をかける。
「気まぐれなんてひどいな~」というサラの言葉は放っておくことにした。
「そんなこと……ないです。
可愛い服は、わたしも……好きなので」
控えめながらも、どこかはっきりとした口調。
どんな顔をしているか、仕草すらも見えてはいないのに。
感情が、伝わる。少女は大丈夫だと、無理はしていないのだと、教えてくれる。
「なら良かった」
栄一は安堵に口元をゆるめた。
「二人の世界だよえーじ君!」
「でもほのぼのしちゃってるね!」
ルナと栄二がこそこそと、けれど普通に聞こえる大きさで話し合う。
しまった。からかわれる原因をまた作ってしまった。
「こ~ゆ~ときは~」
サラが楽しげに、歌うように話し出す。
嫌な予感がした。
「強引に連れ出しちゃえ~♪」
「えっ!? ちょ、そんな……!」
言うが早いかサラは部屋に戻り、すぐにユフの困惑の声が耳に届く。
止めようにも栄一に格好を見せるか見せないかというこの状況で、勝手に部屋に入るわけにもいかない。
そうこうしているうちにサラが出てきて。
手を引かれて姿を現した少女に、栄一は息を呑んだ。
「ユ……フ?」
かすれた声で名を呼んで、確かめる。
「……はい」
うつむいていた少女が返事をして、間違いなくユフだと認識した。
レースやリボンがふんだんに使われた、黒と白を基調にしたワンピースドレス。
三つ編みは解かれ、ふわふわの髪が毛先の方で青いリボンで結ばれている。
朱に染まった頬までが計算され尽くした芸術品のように思える。
「に、似合います……か?」
そこにいる少女は、よく知っている子のはずで。
なのに、全然印象が違うのは、衣装のせいだけなのだろうか。
可憐さはそのままに、華やかさまで感じるその姿は。
咲き誇る大輪の花束のように、ふわりとやわらかく栄一の心を溶かした。
「兄ちゃん、顔真っ赤」
「初々しいね」
栄二の笑い声も、サユの含みのある言葉も、どこか遠くに聞こえて。
熱が質量を持って、栄一の胸にまだ名のない花を咲かせた。
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久しぶりに読んだらやっぱりニヤニヤしたw
ニヤニヤしていただけて嬉しいですw