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しあわせの音

VOCALOID・UTAUキャラ二次創作サイトです

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First feeling

 リンレンだけど、カイミク&マスメイ要素あり。
 やっぱりオリジナル設定込み込み。






 始まりは、ミクの何気ない質問からだった。



First feeling




「ねえ、一番最初に覚えた感情って、なぁに?」
 リビングの見た目をした共有フォルダでそれぞれが気ままに過ごしていた時。
 真ん中の姉がポツリと全員に問いかけてきた。
 下の姉と一緒にパズルで遊んでいたレンは、リンと同じタイミングで顔を上げる。
 ちょうどそろっていた上の姉と兄も不思議そうにミクを見やっていた。

「唐突だね、ミク。何かあったの?」
 皆のまとめ役でありなだめ役でもある、苦労性のKAITOが、四人が思っていたであろうことを訊き返す。
「私がこの家に来た時のこと、考えてたの。
 そしたら、皆はどうだったのかな? って気になっちゃって」
 えへへ、と可愛らしく頬を染めてミクが話す。
 KAITOはその様子に、そっか、と優しげな笑みを浮かべた。
「ついでに、ミクは?」
「嬉しい、だよ。
 歌が歌えて嬉しい。皆に会えて嬉しい。って!」
 口元で人差し指を立てて少しだけ考えた後、VOCALOIDとして模範的な回答をする。
 ミク姉らしいや、と思いながら隣にいたリンに目をやると、かすかに表情がくもっていた。
 まあ、この話題ならば当然と言えば当然か。

「僕も似たようなものかな。
 喜びと、あと少しだけ、途惑い」
 穏やかな彼らしい答えより、だんだんハの字になっていくリンの眉の方がレンは気になっていた。
「お兄ちゃんでもそんなとこがあるんだ~。
 何だか驚きかも」
 二人を置いて、会話は続く。
「アンタの前じゃ良いお兄ちゃんしてるからねぇ、KAITOは」
 意外そうなミクに、MEIKOが面白がって茶々を入れる。
 困ったように笑うKAITOと、意味が分かっていないのか首をかしげるミク。
 ようは、幻滅されたくないから普段は猫を被っているということだ。

「ね、お姉ちゃんは!?」
 考えるのが面倒になったのか、どうでもいいとばかりにさっきの質問をMEIKOに向ける。
 この調子だとすぐにリンとレンにも回ってきそうだ。
 何か当たり障りのない答えを用意しなければ。
 リンを守るのは、半身であり相方であるレンの役目なのだから。
「アタシ? アタシは……忘れたわ。そんな昔のこと」
 MEIKOは一瞬だけ眉を寄せ、すぐに唇が弧を描く。
 本当なのか誤魔化したのかは判断できなかったが、ミクは納得したらしく残念そうに肩を落とした。
「そっか、お姉ちゃんはすごく前のことだもんね」
 その発言に、ぷっ、とKAITOが吹き出した。
 MEIKOは表情にこそ出さないものの、まとう空気が少し重くなったような気がする。
 下の姉の天然っぷりは今に始まったことではないとはいえ、さすがにそれでは『年増』と言っているようなものだ。
 まあ多分、問題発言をしたミクではなく、笑ったKAITOに対して怒っているのだとは思うけれど。

「じゃ、リンちゃんとレンくんは?」
 やっぱり、来た。
 リンの肩がビクッと震える。
「え、と。色々あった気がして良く分かんないや!
 ねね、何だったっけ? レン」
 わざとらしい笑みを浮かべて、少年のすそを引いた。
 無意識の内に、半身に助けを求めているのだ。
 レンは誰にも気づかれないくらい小さく息をついて、口を開く。
「……ま、確かに一つじゃなかったな。
 あえて挙げるなら、“期待”じゃねぇの?
 お前、すげぇはしゃいでただろ」
 やはりと言うか、本当のことは話さないリンに調子を合わせる。
 観察眼のあるKAITOや勘の鋭いMEIKOにはばれそうだが、知らぬふりをしてくれるだろう。
「そうかも!! へへ、レンは良く覚えてるねぇ」
 嘘はついていない。が、すべて話したわけでもない。
 少しの期待と、押しつぶされそうになるほどの、不安。恐れ。憂い。
 一人ではどうしようもなく心細くて、そしてレンが生まれた。
 当初は予定されていなかった片割れを、リンの強い思いが作り出した。
 他の三人とは違い、二人には開発時の記憶が一部残されている。
 それがなければ固体としての形を成せないからだ。

「そーいえばレンは何だったの?」
 リンはきょとんとレンの瞳を覗き込む。
 二人はほぼ同じ波長だからか、考えていることは大体分かるようになっている。
 けれどその時はまだ勝手が分かっていなかったのだろう。
「……忘れた」
 呟いて、ああMEIKOもこんな気持ちだったのか、と理解した。
 マスターが好きだとか格好良いだとか、きっと皆の前では言えないことだったのだ。

 レンは。
 守らなきゃ、と思った。

 自分を生み出した存在を。自分を必要としてくれた存在を。
 小さく小さく、まるでここには少女の居場所はないのだと言うように縮こまって。
 耳を塞いで目を閉じて、この世界にあるすべてが敵だとでも言うように拒絶して。
 ただただ、“誰か”が助けてくれることを、孤独な殻から連れ出してくれることを願っていた。
 いつも強がってばかりだけれど、本当はとても弱くてもろい。
 そんな彼女を、大切だ、と。傷つけたくない、誰にも傷つけさせない、と。


 ――自分がリンを守るんだ、と思った。


 恥ずかしくて、本人には絶対に言えないけれど。

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